津川友介先生×シェフ兼子大輔 コラボ決定記念対談(1)

レシピアンドマーケットはこの度、発売10日で10万部突破のベストセラー「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」(以下「究極の食事」)の著者、UCLA医学部助教授(医師)の津川友介先生に、レシピアンドマーケット「ヘルシーメニューシリーズ」の監修をお願いすることになりました(9月20日より店頭発売開始予定)。

コラボ決定を記念して、津川先生とシェフ兼子大輔が食と健康について対談をさせていただきましたのでその内容を一部ご紹介します!

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UCLA医学部助教授(医師) 津川友介先生とシェフ兼子大輔

一時的な流行を超越した「究極の食事」のアプローチ

シェフ兼子:津川先生、「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」、料理を生業とする者として、とても勉強になりました。

正直はじめは半信半疑でした。というのも、特定の食品や成分が、「科学的に証明された…」として、テレビなどで大々的に「健康に良い!」などと報道されては、時間が経つとあっという間に廃れていくことが少なくないので。ひどい場合、同じ食品や成分が、今度は身体に悪いと報道される事すらあります。また新しい本が出たけれど、どのくらい信じられるのか、と思っていました。

ですが、実際に本を読ませていただいた今、津川先生の本の場合は、一時的な流行り廃りを超越したものを目指されているところが素晴らしいと思っています。

津川先生は「メタアナリシス」という手法を重視されていますが、これは、世の中にものすごく沢山ある研究結果の全体像を把握するために膨大な数の論文を読まれたうえで、「信頼できるどの研究を見ても、一貫して身体にいいという結果が出ているのはこれです」というものを出している、という事ですよね?これならそう簡単に「やっぱり間違っていました」という事になる確率は低いだろうと納得できました。

このくらいしっかりした情報に基づいて、個人としても、会社としても、何を食べるか、何をご提供するか、判断をしていきたいと思いました。ですから、今回、津川先生に監修いただけることになったことをとても嬉しく思っています。

外食産業での健康への取り組み拡大を期待

津川先生:ありがとうございます。

この本を書いてから、読者の方から色々なメッセージをいただくのですが、「本をきっかけに健康に良い食事をしようとすると、ほとんど外食ができなくなってしまい、自炊が増えました」というお話が非常に多いのです。

読者の方の切実な声を聞いて、日本の外食産業での取り組みがもっと進んで欲しい、とちょうど思っていたところでした。ですから、兼子シェフの「レシピアンドマーケット」からタイムリーなご相談をいただき、ぜひお力になりたいと思いました。

また、研究者という仕事柄、ついつい色々調べてしまうのですが(笑)、「レシピアンドマーケット」さんのお料理は、味への評価・評判がとても高いですよね。東京に住む私の友人からも、美味しいと気に入って、よく利用しているという声がありました。

私自身は普段はアメリカにいますので、今回の帰国のタイミングで初めて「レシピアンドマーケット」さんのお料理を数品いただきましたが、共同開発がますます楽しみになりました。

シェフ兼子:嬉しいですね。ご期待に添えるよう全力で頑張ります!

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人間ドックをきっかけに、正しい知識が重要と痛感

シェフ兼子:今回津川先生のお力をお借りして開発していくヘルシーメニューは、私自身が是非食べたいと思う料理でもあります。

個人的な話になりますが、先月人間ドックに行ったところ、血糖値が高めだと再検査になりまして…。再検査の結果、糖尿病でも糖尿病予備軍でもない、ただし、正常の範囲でかなり上限に近い血糖値なので食生活などに十分気をつけるように、と言われました。

津川先生:そうでしたか。糖尿病には、遺伝的な要素もあります。家族に既往歴があると発症リスクが高まりますので、仮にご家族に糖尿病の方がいらっしゃる場合は特に、日頃の食生活などに気をつける方が良いですね。

シェフ兼子:食生活に気をつけようと思った時、正しい知識も不可欠ですね。というのも、再検査の際に、「朝食を抜くと血糖値が急騰しやすくなるので、簡単でも良いから朝食を食べるように」というアドバイスをいただき、毎朝のようにフルーツジュースを飲んでいたのです。ところが、津川先生の本を読んで、生のフルーツは健康に良いが、フルーツジュースは良くないと知り、慌てて切り替えたところです。

良かれと思って実践していることが逆効果だったわけですから、正しい知識がないというのは本当に恐ろしいと思いました。

津川先生:朝食を抜くと昼食後の血糖値が急上昇する現象のことを「セカンドミール効果」と呼びます。朝食に食物繊維を多く含む果物を食べることは良いとされていますが、フルーツジュースはたとえ果汁100%であっても血糖値を急上昇させるのでおすすめしません。果物とそれを絞ったフルーツジュースで健康に対する影響が全く違うということは意外かもしれませんが、これに関しては複数の研究結果が存在しています。

食と健康に関する情報が日本であまりにも氾濫している状態を目の当たりにして危機感を感じ、兼子シェフが言われるような、「良かれと思ってやってきたのに…」というような事態を防ぎたいと思ったことが、私が今回の本の執筆に向かうことになった原点でもあります。

日々の食生活が健康を左右:「後悔させない」食事を届けたい

シェフ兼子:津川先生の本を紹介する、とある記事で読んだ、救急医療に従事されている医師の方によるコメントが印象に残っています。完全に正確ではないかもしれませんが、確か、「長い間頑張って働いてきて、間も無く定年という時になって、心停止や脳卒中を起こして運び込まれる患者さんをみると、いたたまれない。こうした悲劇を避けるために、普段の食生活に気をつけてほしい」という趣旨だったと記憶しています。

臨場感と重みがあり、毎日の食事を提供する立場としての大きな責任も感じさせられました。知らず知らず体に悪い食事をしてきた結果…というのでは後悔してもしきれないですよね。

何が健康に良いか、津川先生の本を通じて知ってしまった以上、「美味しくて、しかも健康に良い」と自信を持っておすすめできる料理を提供していきたいです。将来「選んできてよかった」と思っていただける、後悔させない食事をお届けしたい。今回の「ヘルシーメニュー」導入を通じて、店舗全体のラインナップについても、第二創業ぐらいの覚悟と想いを持って、相当大きく舵を切っていきたいと思っています。

津川先生:兼子シェフは新しいメニューの開発はいつもどのように進められるのですか?

シェフ兼子:いろいろなパターンがありますが、季節毎の旬の食材がありますので、その魅力をいかに引き出すかは常に大きなテーマです。メニュー考案はクリエイティブな仕事でありながら、常に食材という制約からスタートするとも言えます。

そういう意味では、津川先生の監修のもと、健康に良い食材を元に進めていくヘルシーメニューの開発も、普段のメニュー開発と大きく違うわけではありません。「ヘルシーだけどこんなに美味しいんだ」と驚きや喜びをお届けできる料理をぜひ作っていきたいと思います。

 

津川友介先生×シェフ兼子大輔 コラボ決定記念対談(2)

に続きます。

 

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津川友介先生×シェフ兼子大輔 コラボ決定記念対談(2)

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「究極の食事」を個人的に取り入れてみて…

シェフ兼子:津川先生の本を読んで、レシピアンドマーケットの「10種の野菜のサラダ」の大きなサイズにローストチキンの惣菜を添える、という組み合わせを試してみたところ、すっかり気に入り、週に何度もランチに食べています。

津川先生:「10種の野菜のサラダ」とローストチキンの組み合わせ、私も先ほど美味しくいただきました。栄養バランスも理想的で素晴らしいと思います。本にも書きましたが、ナッツやオリーブオイルを多く食べていると、脳卒中やがん、糖尿病の発生確率が下がることが研究で示唆されていますので。

シェフ兼子:あくまでも私個人の感覚ですが、満足感はしっかりあるのに、ご飯ものなどをたっぷり食べた後のようなぼーっとする感じがなく、午後仕事をしていても、頭も体も快調に感じます。

津川先生:白い炭水化物(精製された炭水化物のこと)のご飯ものなどをたっぷり食べた時には血糖値が急上昇するのですが、その後はインスリンが大量に分泌されて逆に一過性に低血糖になります。おそらくそれで、頭がぼーっとした感じになるのでしょう。

「究極の食事」が目指しているのはあくまでも中長期的に健康を保っていただくことですが、実際に本でおすすめしているような食事をお召し上がりいただくと、2週間ほどで体調の違いを感じられる方も少なくないようです。

ちなみに、実践していただいた読者の方から、我慢していないのに自然に体重が落ちたというご報告を複数いただいています。「究極の食事」の目的はあくまでも健康であって決してダイエットではないのですが、結果的に。また、茶色い炭水化物(精製されていない炭水化物のこと)に切り替えていただくと、便秘などのお悩みはかなり減るようですね。

シェフ兼子:そう言えば、私自身も津川先生の本を読んで食事を意識するようになって以来、2キロほど自然に体重が落ちました。

私の身長でもっとも病気になりにくい体重が66.6キロだというので、上回ったら食事制限をしてこの体重を維持してきたのですが、特に食事制限をせず、気がついたら減っていたというのは初めてです。

正しい知識を踏まえた「意識的な選択」が大事

シェフ兼子:津川先生ご自身は、普段どのような食事をされているのですか?

津川先生:基本的には本にも書いた健康に良い5食品は意識して食べるようにしています。私の住んでいるアメリカでは、ボリュームのあるサラダなど、野菜果物がたっぷりと取れるような食事は日本よりも買いやすいように感じます。

と言っても、私自身、健康に良いものだけ食べて、健康に悪いものは全く食べない、というわけではありません。たとえば牛肉や豚肉などの「赤い肉」は、本にも書いたように、複数の信頼できる研究によって健康に悪いとわかっている食品です(注1)が、私自身も時には、焼肉やステーキが食べたいと思い、友人や家族と楽しみに出かけることもあります。ただ、食と健康に関する体系的な知識を得る前と比べて、赤い肉の全体的な摂取量は減っています。

シェフ兼子:なるほど。普段の食事では健康を重視されつつも、時には美味しさを重視する食事も楽しまれているということなのですね。

私も牛肉なども好きなので、津川先生も全く召し上がらないわけではないと知り、少し安心しました(笑)。

津川先生:人生の楽しみとして、時には健康重視の食事の代わりに、美味しさ重視で例えば焼肉を食べに行くのは、納得ずくの選択として良いと思いますし、私自身も時々しています。ただ、例えば日常の食事で、牛肉でも鶏肉でもどちらでも構わないなと思う場合…人生ではこういう場合がかなり多いと思うのですが…に、知識がないばかりに、無意識に健康に悪い方を選び続けてしまい、将来病気になってから後悔するというのでは、あまりに残念だと思います。

消費者の方が正しい知識を踏まえた上で、日々の食事を意識的に選択していける世の中にしたい。これが、私が「究極の食事」の執筆を通じて実現したいことです。

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健康を新たな軸に、より大きな喜びを生みたい

シェフ兼子:私たちも、具体的なヘルシーメニューの提供を通じて、津川先生の目指す正しい知識の普及に少しでも力になれれば嬉しいです。

今回津川先生のお力をお借りして「ヘルシーメニュー」に取り組もうと思ったきっかけの一つは、少し前に「Room to Read」というNPO(注2)の創業発展ストーリーをYou Tubeの映像でみて、とても感動したことです。

映像を見て感じたのは、生み出している喜びの総量が桁違いというか…。感動すると同時に、自分ももっと何かできないかと考えさせられました。レシピアンドマーケットでも、美味しいものを手軽に買って帰れる喜びをお客様にご提供しているという手応えはあるのですが、それ以上にもっと大きな喜びを生み出したり、青臭い言葉ですけれど、もっと世の中に貢献できることは何かないのかと。

会社が大きくなったらやりたいと思うようなことを、この際今からやってしまおう、というような話を経営チームでしました。

社内でアイデアを出しあってブレストをしている中で、「食を手がける以上、健康は一つの大きなテーマ」「国民医療費が今や40兆円を越え、さらに増加が見込まれる中、これをどう賄っていくかが日本の大きな課題。健康維持に貢献することで、ひいては医療費削減にも貢献できたら」といった方向性が出てきたんです。

私自身がこの方向性にしっくりきた理由は二つあります。食を通じた健康維持への貢献、というテーマであれば、本業の傍の慈善活動ではなく、本家本丸の事業直結ですから、本腰を入れて世の中に大きく貢献できる可能性があるのがまずいいなと思いました。また、タイミング的にも、ちょうど人間ドックで血糖値が高いという結果が出て、健康管理について個人的にも危機感が高まっていて、確かにそれは大事だと身をもって感じたのも大きかったです。

実は、津川先生の本以外にも、ベストセラー、ロングセラーの食と健康に関する書籍は経営チームがかなりの数読んだのですが、「究極の食事」に一番説得力があると感じました。そこで、津川先生に共同開発をご相談したという経緯なんです。

津川先生:それは素晴らしい志ですね。私自身もとても共感しますし、ぜひお力になれればと思います。

シェフ兼子:ありがとうございます。とても心強く思っています。ぜひ宜しくお願いします。

津川先生、今日はお忙しい中、貴重なお時間を本当にありがとうございました!ヘルシーメニューの開発に向けて、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

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注1)津川先生による解説:「牛肉や豚肉などの4本足の動物の肉(『赤い肉(レッドミート)』と呼ぶ)は大腸がんのリスクをあげるという研究結果があるので控えていただいた方が良いのですが、鶏肉や鴨肉は大丈夫であるとされています。」

注2)Room to Read は途上国に本や教育機会を提供している、2000年設立の世界的なNPO。マイクロソフトで要職についていたジョンウッド氏が個人的な旅行でネパールの学校を訪れた際、本がほとんどないことに愕然として、知人友人に呼びかけて個人的に本を贈与したのが活動の原点。これまでに1000万人を超える子供達の教育機会改善に貢献。

 

対談日・場所:2018年6月21日 東京都南青山 L’AS/CORKにて

書き手:RECIPE&MARKET 上山